遊郭探訪記〜江戸幕府公認の色街・大阪新町遊郭跡を歩く〜

遊郭探訪記〜江戸幕府公認の色街・大阪新町遊郭跡を歩く〜

皆さん、初めまして。

今回よりブログ初参戦のスタッフSです。

 
記念すべき第1回目は、大阪を代表する色街・新町遊郭 について。
時は江戸時代。現在の大阪市西区新町1丁目〜2丁目の辺りに巨大な遊郭が存在しました。
 
マップ
このあたりですね。東に阪神高速、南に長堀通が通ります。
実は、新町遊郭の跡地は、弊社の所在地である南船場から目と鼻の先にあるエリアなんです。
 
それではさっそく探索にいってみましょう〜〜〜
 
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阪神高速高架下
弊社から西へ1分程歩くと阪神高速の高架下に行き着きます。
 
かつてこの場所には川が流れており、そこに 新町橋 という名の橋が架かっていました。
この橋を渡り終えた所に大門(おおもん)と呼ばれる門があり、大門をくぐるとその先にはいわゆる色街が広がっていました。
 
この色街こそが江戸時代、日本三大遊郭の一つ であった新町遊郭です(あとの二つは江戸の吉原、京都の島原)。1627年(寛永4年)、もともとは各地に点在していた遊女屋を一箇所に集めて新しい町を作ったのがこの場所の始まりだそうです。
 
新町遊郭は四方を塀で囲われており、橋のたもとの大門には番所があったようで、人々の出入りは比較的厳しく統制されていました。つまり、この場所に足を踏み入れる為には橋を越え、門をくぐり、番所を通り抜けなければいけない。
 
なかなか簡単には辿り着けないですよね?これが新町遊郭の“非日常感・別世界感”をより一層高めていたのではないかと想像します。
 
新町橋石碑
現在、新町橋の架かっていた場所には石碑が建てられています。
 
山口草平・大阪新町橋図

「大阪新町橋図」山口草平

 
弊社でも過去に、新町橋を描いた作品のお取り扱いをしています。
 
作者は山口草平、大正-昭和期の日本画家です。大阪堀江の元芸妓で画家であった大石順教尼と、一時期結婚していました。
 
摂津名所図会・順慶町井戸辻夜店

『摂津名所図会』「順慶町井戸辻夜店」

 
当時この新町橋は、道頓堀の繁華街など市内側と遊郭を繋ぐ唯一の通路でした。
そのため橋の上には夜店が並び、それは橋の東側の 順慶町 まで続くほど大きな賑わいをみせていたとか。
 
浪花名所図会・順慶町夜見世之図

『浪花名所図会』「順慶町夜見世之図」初代歌川広重/画

出典:国立国会図書館デジタルコレクション

 
歌川広重の浪花名所図会にもこの順慶町の夜市の様子が描かれています。
 
こうやって見ると、色んな物が売られているのが分かってめちゃくちゃ面白いですね。
桶屋に魚屋(干物屋?)に占い、奥に見えるのは女性用の化粧品道具屋でしょうか…?
 
順慶町
こちらは順慶町側の現在の様子。弊社の店舗の場所を●で示してみました。
奥へ進むと御堂筋、そして心斎橋筋商店街に突き当ります。
 
澪標・大阪新町細見之図

『澪標』「大阪新町細見之図」吟古市人/編

出典:大阪市立図書館デジタルアーカイブ

 
さあ、いよいよ遊郭の中へ突入しましょう!
 
この場所から門をくぐって別世界へと入っていったのですね〜当時の男性のドキドキ・ワクワク感を想像しながら進みます。上の絵の中にも明らかに浮かれている人、いますよね(笑)
 
大阪新町 夕陽廓の賑

出典:日本の古本屋

 
こちらは遊郭の内部。当時の賑わいの様子が分かります。
図中右下の新町橋から奥へと真っ直ぐ伸びる道が新町遊郭の中心街、いわゆるメインストリートにあたります。
 
新町
ちなみにこちらが現在のメインストリートの様子。(当時の繁栄ぶりはどこへ…)
 
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さてみなさん、突然ですが 遊郭のシステム はご存知でしょうか??
ここでは新町遊郭の遊び方について簡単にご説明しましょう。
 
新町の遊女には4つの階級があり、その中で最も格が高いのは「太夫 (たゆう)」と呼ばれました。
 
最高位である太夫には容姿はもちろんのこと、深い知性や教養、また品性や内面の人間的魅力など実に多くのものが求められ、それらを体現する太夫は一般庶民にとっては憧れの存在だったようです。
現代でいうと才色兼備のトップアイドルといったところでしょうか?
 
客は「置屋(遊女を抱えておく店で、生活の場でもあった)」で遊女の品定めをし、「揚屋(遊女を招く店)」である料亭・貸座敷に予め指名した遊女を呼んで遊んだそう。ちなみに揚屋に招かれるのは格上の遊女のみ。太夫やその下のクラスですね。
 
以下は「茶屋(揚屋に比べて簡易的な店)」に呼ばれ、さらに格下になると「店付茶屋(茶屋と置屋が一緒になったもの)」で客を迎えました。
 
新町店つき

『浪花百景』「新町店つき」歌川國員/画

出典:大阪市立図書館デジタルアーカイブ

 
客が格子越しに好みの遊女を品定めしています。「みせ(見世)」とは通りに面して設けられた格子張りの部屋を指します。
 
しん町九けん丁

『浪花名所図会』「しん町九けん丁」

出典:国立国会図書館デジタルコレクション

 
こちらは揚屋に招かれる太夫の一行が描かれています。さすがトップアイドル、行列も華やかですね。太夫になるとこうした移動すらちょっとしたイベントになるのです。
 
新町廓中九軒夜桜

『浪花百景』「新町廓中九軒夜桜」里の家芳瀧/画

出典:大阪市立図書館デジタルアーカイブ

 
この場所は新町遊郭の揚屋町街。「九軒町」と呼ばれ、格上の遊女を呼んで遊ぶ揚屋が並んでいました。九軒町には桜並木が植えられており、殊に夜桜の名所として知られていたようです。
 
九軒町
かつての九軒町は現在公園に変わっていますが、隅の方には石碑が建てられており、公園内には当時と同じ桜並木が再現されています。
 
九軒町の有名な揚屋に吉田屋、高島屋などがあります。
1672年(寛文12年)頃に新町遊郭に実在し、絶世の美女と称され歌舞伎や人形浄瑠璃に登場する「夕霧太夫」も上記の揚屋で遊んだことが伝わっています。
 
こうして江戸中期には800名を超える遊女を抱え繁栄を極めた新町遊郭ですが、その後明治初頭の松島遊廓の誕生や芸娼妓解放令の発布、更には1890年(明治23年)に起こった大火の影響で、徐々にその規模は縮小へ向かいます。
 
新町演舞場跡地
高層マンション
 
1922年(大正11年)、高島屋の跡地に 新町演舞場(芸妓による浪花踊などが演じられた劇場)が建設されました。この頃にはすでに揚屋は吉田屋など数軒を残すのみとなっていましたが、その吉田屋も1945年(昭和20年)、大阪大空襲によって焼失してしまいます。
 
二度目の大火の際、この辺り一帯は再び焼け野原となり、唯一焼け残ったのが上記の劇場でした。
戦後、劇場の一部は書籍卸売業を営んでいた(株)大阪屋が社屋として利用していましたが、現在はそれも解体されて高層マンションへ変わっています。
 
そういうわけで、現在の新町には現存する遊郭の建造物はほとんどありません。なんせ二度も焼け野原になってますからね…。
 
そんなちょっぴり寂しい新町遊郭跡ではありますが、それでも歴史の名残や色街の面影は今もそれとなく漂っていますよ。今回は取り上げませんでしたが、散策中「おっ、これはもしかして…!?」というものを私もいくつか発見しました。
 
気になる方はぜひ一度ご自分の目で確かめにいらしてくださいね!
 
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ちなみに現在、新町は美味しいお店のひしめくエリアになってます。心斎橋や難波の喧騒からは少し外れるので穴場スポットでもあります。
 
私は休憩時間にランチがてらよく足をのばしますが、ディナーはもちろん、スイーツの有名店も多々あり、遊郭抜きにして歩くだけでも楽しい所です!
 
少しだけご紹介↓↓
 
餅匠しづく01
餅匠しづく02

餅匠しづく 公式HP より

 
まずはこのブログでも何度か登場している、餅匠しづく さん。
 
味はさることながら、外観もほんまに和菓子屋さんかと疑いたくなるほど洗練されています。お洒落なあの人への手土産にももってこい。
 
ちひろ菓子店01
ちひろ菓子店02

ちひろ菓子店 公式HP より

 
こちらは激うまフィナンシェのお店、ちひろ菓子店 さん。
 
関西の有名なスイーツレポーターちひろさんプロデュースのお店です。
食べた後小っさく叫びたくなるような、そんな味。お店で買い物したら焼きたてのフィナンシェもらえるよ。
 
他にもお気に入りのお店がたくさん!大好きなエリアです。
 
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株式会社縁 では、1Fの実店舗で器と掛軸の販売を行なっております!
器は主に、江戸〜幕末明治期の古伊万里が中心のお取り扱い。
 
弊社の店舗で古伊万里のお買い物 → 新町の遊郭跡巡り → 休憩がてら美味しいランチ → お土産にスイーツのテイクアウト
 
蒸し暑さも段々落ち着き、過ごしやすくなってくるこれからの季節。
ちょっとしたタイムスリップが出来そうな、こんなお散歩コースはいかがでしょう?
江戸時代って遠い昔のようで以外と身近かも…そんな風に歴史に思いを馳せる秋の休日もなかなか粋なもんじゃあないでしょうか(*^_^*)
 
(あっ、できれば散策は平日にお越しください…弊社の店舗は土日祝お休みにしてることが多いです…)
 
 
今回はこのへんで!
 
スタッフの趣味丸出し の投稿にお付き合い頂きありがとうございました。
あー面白かった!やはり遊郭にはいつの時代も人を惹きつける魅力がある気がします。そのうち探訪記第二弾やりたいなぁ。
 
それではまたお会いしましょう〜〜〜