展覧会訪問記 – 不思議な絵の楽しみ方

みなさま、こんにちは。
担当C・Kです。
 
緊急事態宣言下、少しずつ緩和されてきてはいますが、まだまだ予断を許しませんね。
私は、日本画、西洋画問わず展覧会に行く事が好きですが。去年から私が行きたかった展覧会も、み~んな延期や中止に追い込まれています。
 
ここからは、以前私が訪れた展覧会で、今最も印象的に覚えている展覧会と、展示されていた作品についてお話します。
 
かれこれ3年以上前になります。
 
2017年に 『ボイマンス美術館所蔵ブリューゲル「バベルの塔」展』16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて- が、国立国際美術館で開催されました。 
 
こちらの展覧会、はじめは15、6世紀の画家たちが描いた荘厳な宗教画から始まりますが、突然、風刺画のような不思議な版画の数々が出て来ます。
 
特に印象に残った風刺画はこれです。
絵画
『大きな魚は小さな魚を食う』 ピーテル・ブリューゲル1世

(同展覧会図録より)

 
この作品のタイトルはことわざだそうで「強い権力を持ったものは、弱いものを支配し、破壊することができる」という弱肉強食の意味なのだとか・・・。しかし、これは風刺画、これには「権力を振り回しすぎると、最後には立場が逆転する」というメッセージがこめられています。体の大きさに驕り、力任せに小さな魚を捕食し続けた大魚は、ついに小さな人間に捕獲されてしまったと言うわけです。
 
しかし、よくよくこの絵を見ると不思議なモチーフが描かれていることがわかります。作品の左上を見てください。二足歩行の魚が小さな魚を咥えています。
 
これにはどういった意味があるのでしょう?
 
大きな魚の腹から出てきた小魚を労せず確保した『漁夫の利』的な意味かもしれません。
あるいは、二足歩行はある意味人類の象徴ですから、今は捕食者の人類が驕りすぎれば、いずれ魚のように捕食されるようになるのでは?という意味にも捉えられると思います。
 
このように 絵の見方はそれぞれ です。
メインの大魚も「いくら体が大きなものも、知恵のあるものには敵わない」という意味にも解釈できるそうです。また、絵の右上には空飛ぶ魚もいます。これの意味するところはさっぱりわかりませんし、意味はないのかもしれません。
 
この作品が風刺画ではないとしたら、ただ単に、現実にはありえない不思議な世界が描かれています。こめられたメッセージを推測することは重要ですし、楽しいです。でも、絵がわからないという人は、こめられたメッセージを読み解こうとして、わからず、よくわからない絵という感想で終ってしまう人もいます。
 
しかしながら、ただ目の前の不思議な世界を楽しむのも、絵を見た人の特権です。ファンタジーな世界を楽しんだ後、自分なりのこめられたメッセージを考えてみるのもよし、学芸員さんの解説を読むのもよしです。どうせ確かな正解はありません。
 
他の様々な作品もそうです。まずは見て、ただ楽しむことからはじめてみてはいかがでしょう? そうすればきっと楽しく作品を鑑賞できると思います。
 
他の絵については、また機会があればお話したいと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。