お久しぶりです。バイヤーAです。
前回「紫色」についてお話ししましたが、骨董の世界においても 紫 は貴重な色とされています。
弊社が取り扱う掛軸の表具、裂地 の世界でも古い「高野裂」や「辻が花裂」などの、江戸時代以前の名物裂においても「紫」は希少価値が高いです。
他には、掛軸や道具を保管する 収納箱の紐。これらは「真田紐」と呼ばれますが、その中でも紫は位の高い色とされています。
少し話が逸れますが、戦国時代には 「御約束紐(おやくそくひも)」 というルールがあり、紐の柄や色、結び方に多くの秘密や決まり事があったようです。千家、裏千家、武者小路などお茶の流派や、一部には個人の柄も決められていたみたいですね。
今でいうと 紐柄がID で 結び方がパスワード。箱の中身の真贋(しんがん)を見分ける重要な要素であり、また紐の結び方で開封されたかどうかもわかります。紐の柄は時代によって異なるので時代考証にもなるといいます。
現在でも真田紐は色や柄が沢山ありますので、自分だけの「御約束紐(おやくそくひも)」を箱に掛けて楽しむのも良いですね。
更に 皇族が使用する紐 となるとまた一味違います。天皇陛下の装束や所有物は、古来から海の貝類や海牛から取れた紫袋で染められ 古代紫・貝紫 のものが使われているみたいです。
去年行われた、新天皇陛下即位に伴う「剣璽等承継の儀」でも三種の神器を入れた袋と紐は紫の色で荘厳な感じがしましたね。
最近は、一般の方でも古代紫の使用は認められておりますので、真田紐の場合で言えば、主に 目上の方への贈答品 などに使われるようです。
皆さんも蒐集品の中身を楽しむのは勿論ですが、それらを収納する箱や紐にも色や柄で価値も変わってくる骨董品ならではの楽しみ方があり、自分で愉しむのは勿論、普段からお世話になっている方に、そっと「紫」を添えてみるのはいかがでしょうか。