皆さま、こんにちは。スタッフC・Kです。
今回は弊社が主に取り扱う日本画から離れ、西洋絵画についてお話します。
展覧会などで西洋画をご覧になられたことがある方も多いと思いますが、「この人物は誰だろう?」とか「これは何を表した絵だろう?」と思ったことがある方も非常に多いと思います。しかし、西洋の宗教(キリスト教など)や西洋での伝説などになじみが薄い我々日本人がすぐに理解するのは難しいでしょう。
しかし、西洋画にはある決まりが存在します。『アトリビュート』という言葉をご存じでしょうか?
『アトリビュート』とは・・・・・・
西洋美術において伝説上・歴史上の人物または神話上の神と関連付けられた持ち物、その物の持ち主を特定する役割を果たす物。持物(じぶつ)。(ウィキペディア より)
この説明だと少しわかりにくいかもしれませんね。では、日本画で例を挙げてみましょう。
*****
想像してみて下さい。皆さんの目の前に一人の少年の絵があります。
これだとこの少年が誰かわかる方はいないと思います。
では、こちらだとどうでしょう?
(奥谷一陽 作『桃太郎図』 弊社の過去販売作品です)
少年の周囲には「犬」「猿」「雉」が描かれています。よく見るとその服装には「桃」が描かれた服を着ています。もうお分かりですね?少年の名前は「桃太郎」です。日本昔話で一二を争うほど有名なヒーローですね。
ここで皆さんに考えていただきたいのは、何をもって彼が「桃太郎」であると判断したか?ということです。
おそらく「犬」、「猿」、「雉」、「桃」といった「桃太郎」の象徴たる品を確認したからだと思います。ここでいう「犬」、「猿」、「雉」、「桃」が「桃太郎」の『アトリビュート』に当たる物ということになります。
*****
西洋絵画には『アトリビュート』が存在します。これを知ることで西洋絵画を今よりずっと理解できると思います。
それでは、世界でも有名な人物「聖母マリア」の絵を見てみましょう。
(レオナルド・ダ・ヴィンチ作『受胎告知』ウィキペディアより)
上の絵画は、聖母マリアが天使ガブリエルにキリストを妊娠していることを告げられる『受胎告知』です。向かって右の女性が聖母マリア、左の羽の生えた人物が天使ガブリエルです。
聖母マリアの『アトリビュート』で有名なものは「白百合」、「赤い服と青いマント」、「幼子イエス」などです。
「赤い服の上から青いマント」を着た女性、その対面に跪く天使の手には「百合の花」があります。よって、右の女性は聖母マリアだとわかるというわけです。ちなみに「白百合」は乙女の純潔を、「赤い服」は神の慈愛を表すそうです。
さらに聖母マリアのそばにはまだ「イエス」はおらず、目の前には天使が跪いて何か語りかけていることからこの作品は『受胎告知』を表したものであると断定できるのです。
その他の「聖母マリア」の作品も見てみましょう。
(ラファエロ・サンツィオ 作『大公の聖母』ウィキペディアより)
レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』とは画風も場面も違いますが、赤い服に青いマント赤い服に青いマント、幼子(イエス)が描かれています。人物だけしか描かれていないにもかかわらず、この女性は「聖母マリア」だとわかります。
他にも
キリスト・・・・・羊、十字架、茨の冠など
洗礼者ヨハネ・・・・・ らくだの皮の衣、斧と切株、十字架
等があります。
このように『アトリビュート』を知ることで西洋画への理解が深まり、より楽しく作品をご覧いただけるようになると思われます。西洋画を鑑賞された方はその作品の『アトリビュート』が何だったのか、何を表していたのか考えてみるのも新たな楽しみとなることでしょう。
ここまでご覧いただきありがとうございました。